「俺も、虹には感謝してる」

「へ?」

思いもよらない言葉に瞬時に金縛りが解ける。

「私に?なんで?」

むしろ私は助けられてばかりで、小椋くんに何かをしてあげた記憶なんて一切ない。


「はは。ありがとうな……ナナ」


……⁈

「えっ?えっ?……えっ?」

ナナ?なんでその名前を?

全身から冷や汗が吹き出る。なんで小椋くんがその名前を知ってるの?

その表情はまるでいたずらっ子のように口角を上げている。


……まさか。


恥ずかしさのあまり思わず両手で顔を隠してしまう。

「……もしかして……イチ?」

「ピンポン!」

嘘でしょう?

抱えた膝に顔を乗せて微動だにできないでいると。

「おまえには感謝してる。いつも俺を助けてくれた」

そう言って暖かな大きな手が私の頭を撫でる。

胸の奥が、熱い。

こんな気分久しぶりだった。恥ずかしいから?戸惑っているから?

違う……きっと嬉しいんだ。

どこの誰だか知らずにやり取りをしていた相手が、まさか小椋くんだったなんて。あの悩んでる呟きも、私を励ます言葉も、前向きな一言も。

「なんで分かったの?」

私は全然気づかなかった。

「んー、色んなこと。米村さんが亡くなった時期とか」

はぁ……そうか。私の投稿と、私の周りの状況を見て気づいたってこと?やっぱりすごいな、小椋くん。

心の中まで覗かれたような恥ずかしさでまだ心臓は跳ね上がったままだ。

「私だって、イチには助けられたよ」

「そか?それならよかった」

見なくても声で分かる。

小椋くんの笑顔を見たくて顔を上げる。

「……ありがとう」

クシャッと崩した笑顔にキュンとする。