「今日虹に来てもらったのは、翠のこと謝りたかったのと、別れた報告」

「うん……」

小椋くんが彼女と別れた。その衝撃をまだ受け入れられない。

こうして話したりすることにビクビクしないでいいのは嬉しいけど……手放しでは喜べないのも事実。

「ンな顔すんなって。お互いに納得して別れたんだからさ」

「うん」

2人のことは、2人にしか分からない。でも、小椋くんの爽やかな笑顔を見ていたらきっとこれでよかったのかなと思える。

「虹の友達の背の高い女子、あいつも心配してたぞ」

話題も気分も変えるようにスクッと立ち上がる小椋くん。自分のカバンからサッカーボールを取り出し私の目の前でリフティングを始める。

「木下さん?」

友達、なのかな……。

ぽんぽん弾むボール。

「ああ、木下か。虹が熱出してる時に、何かあったか知らない?て」

「ふふ……そっか」

小椋くんがチラッとモノマネを入れてくるから笑ってしまう。

木下さん、小椋くんにそんなこと聞いてくれてたんだ。

「いい友達持ってよかったな」

「え、うん」

確かに、木下さんは私を心配してくれるたった1人のクラスメイトだ。

「感謝しなくちゃ、ね」

独り言のつもりで発した言葉は、リフティングをする小椋くんにも届いていたようで。

蹴り上げたボールをキャッチし、クルリと私の方を向く。

トクンと跳ね上がる心臓。お願い、静まって。小椋くんに聞こえちゃう。

ボールを抱えたまま私の前に立ち、スッとしゃがんで私に視線を合わせる。

な、何?

その真っ直ぐな目に引き込まれ、金縛りにあったように動けない。