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……聞いてない。

地獄のような模試が終わった午後、私は隣の駅辺りにある広い公園のベンチに座っている。

嘉山くんに誘われ、鼓太郎ともメールをし、元気そうな彼に会いに来た。

ここは朱里と鼓太郎と3人で来たこともある思い出の場所だし、緑あふれる景色は開放感でいっぱいだ。

目の前にはキャッチボールをする嘉山くんと鼓太郎……と小椋くん。

なんで小椋くんがいるの?

思わずたじろぐ私に3人は言ってなかった?と笑うだけだった。

聞いてないよ……また小岳さんに聞かれたら何言われるか分からないよ。

かといって今さら帰るのもどうかと思うし……。

そう言いつつ、心の奥底はトクンと跳ね上がり続けている。

楽しそうにキャッチボールをする3人。
鼓太郎も、朱里がいた頃の彼の様子と変わらず安心する。

鼓太郎に会いに来たのに、野球部の2人にも引けを取らない小椋くんの姿に思わず見惚れてる。

やっぱり、かっこいいな。

諦めようとしてるのに……なんで私に黙って誘うかな。

ふう、と思わずため息。

横に置いたカバンから持参した水筒を取り出してお茶を飲む。

するとザッザッという足音が聞こえ顔を向けると、こちらへ向かってくる小椋くんの姿が。

ちょっと待ってよなんでこっち来るの?心の準備できてないよ。

「ちょっと涼しくなってきたな」

「うん、そうだね」

いつものことだけど、目を合わせられない。

「……もしかして俺が来るって知ってたら、来なかった?」

「えっ?……いや……」

小椋くんが来ていると知った時、動揺していたのがバレてしまったのだろうか。

図星な質問にますますうろたえる。

決して嫌なわけじゃないことだけは、分かってほしい。