「飯倉さん」

「はい」

私を呼ぶ声はだいたい先生だ。

小岳さんの声ではないことに安堵し、休んでた間の補習かなんかの話しだろう、と構えずに振り向く。

「か、やま君?」

予想は外れ、私に声をかけてきたのは鼓太郎の友達の嘉山くんだった。

「ごめん、急に」

「ううん」

鼓太郎に何かあったのだろうか……。

「今度の木曜の模試の後ってさ、ヒマ?」

「え、模試?」

そんなのあったっけ……。

「うん、ヒマだけど。鼓太郎がどうかしたの?」

「いや、あいつはどんどん元気になってるよ。テスト前になったら補習受けに学校来るってさ」

「そう!よかった」

本当によかった。

『さあ、これからだ』

そう呟いたイチとリンクする。

「でさ、木曜に杉浦公園で鼓太郎と会う約束してるんだけどさ、近くだから虹ちゃんもどう?」

「私運動できないから、遠慮しとく」

2人についていけるわけないじゃん、足手まといになって迷惑なだけ。

「いやいや、別に運動しなくたってさ、その……気分転換にもなるから」

「……」

「鼓太郎も会いたいって言ってたし、どう?」

鼓太郎が?

「……じゃ、ちょっとだけ顔出そうかな」

私も鼓太郎には会いたい。

同じ傷を抱えた同士だし、朱里がいた頃には毎日一緒だったし。

「よし、決まり!じゃまた鼓太郎から連絡してもらうよ、じゃな」

「うん」

鼓太郎には全然連絡を取ってなかった。
朱里のこと以外話題もない。でもやっぱり朱里の話はしにくいし。

気になりながらも避けてきてしまっていた。

たぶん、鼓太郎も同じ。

公園なんて久しぶりだな。

少しずつ元気を取り戻している鼓太郎に会ったら、私も何か新しい刺激を得られるかもしれないな。