体のリハビリ、頭のリハビリは順調に進んだ。授業の多さにはウンザリで、途中で投げ出したけど。

心は……力を抜いて。

もう、それしか出来なかった。不器用な私には、アレもコレも一度に抱えるのは到底無理だ。

何も考えず、何も感じず。なんとかこの暗闇から道が開けるまで。

あれからイチと個人的にメッセージをやり取りしていない。

なんでだろ……?

たいしたややり取りをしていたわけじゃない。

細い糸でかろうじて繋がっていた2人がプツンと切れてしまったようで、ちょっと寂しかった。

でも、私からメッセージを送る勇気なんてない。

そんな私だからきっと、愛愛想をつかされたんだろうな。

『さあ、これからだ』

土曜の朝投稿されていたイチの呟き。

私にはまだ見ぬ青空への道が、彼には見えているのかもしれない。


「おはよう」

久しぶりの教室。

もちろん、以前と何も変わらない。

たった1週間休んだだけなのに、なんだか懐かしい匂いにホッとする。

鼓太郎は学校に来ないことがリハビリ。
私はたとえ1人ぼっちでも、学校にいた方が少しでも気が紛れていいのかもしれない。

「虹〜!!よかった!大丈夫?」

なんだか一回り大きくなったような気がする木下さんが私に抱きついてきた。

「あ、うん……ごめんね、ノートもありがとう」

人の温もりに、ため息が出る。

「ううん、分からないところあったら野村に聞いて!」

「は?なんで俺?」

「あ、あんたに聞いたら余計に分からなくなるか」

「こら!」

相変わらずテンポのいいみんなの会話にはついていけないけど。

私は朱里のことがあっても、たとえ無理していたとしても。

学校には来ていてよかった、そう思えた。

ほんの数人だけでも、こうして私のことを気遣ってくれる人がいる。


久しぶりの学校は、ボーっとしていたらあっという間に過ぎた。

タブレットに入れている朱里の絵を眺めたりして過ごした。

ねえ、朱里。

私はこれから、何を糧にして生きていけばいいの?