こんな熱、すぐに下げてやる。

そんな密かな反発の気持ちも虚しく、私は4日も高熱に苦しめられた。

ただでさえ朱里を亡くしてズタボロになっているのに、小岳さんからの追い討ちを喰らい、トドメが高熱ですか。

そろそろ、やさぐれようかなと思った4日目の夜になりようやく熱も下がり始め、どんどん体も軽くなっていった。

冷たい水でも飲もうかと立ち上がり、窓から見える夜空を見上げる。

そこには珍しく多くの星が瞬いていた。
こんなことあるんだーー。

夜は、暗闇なんかじゃない。

そんな風に教えてくれているようで、沈んでいた気持ちがほんの少し、フワリと浮かぶ。

冷たい水を体に入れると、熱で乾きほてっていた体が中から冷やされる。

ドライアイスの煙が広がっていくようにゆっくりと。

こんな風に簡単に頭も気持ちも冷やせたらいいのに。

まだ少し痛む頭をブンと振り、さっきまで寝ていたベッドに腰掛ける。

休んだ初日に木下さんから来たメールに返信したきり放置していたスマホを手に取る。

どうせ誰からの連絡もないだろうけど。
久しぶりに見る明るい画面の眩しさに思わず瞬きが止まらない。

そこにはやはり誰からのメッセージもなかった。

ただ一件。長い休みを心配してくれている木下さんからのメールだけだった。

『ありがとう。たぶん明日からは行けそうです』

そう返信した。

そっけなかったかな……。

もーまいったよー。やっと熱下がったよー泣……なんて感じ?絵文字やらスタンプ使って。

どうせ打てない内容を考えたって虚しいだけだ。