「いやいや、俺もこないだ透に同じこと聞かれて、同じように答えたから」

「あーね」

納得している様子の翠。

納得してんじゃねーよ。それ以外好きなところないの?て思えよ。

「他には出てこないだろ、俺の好きなところ」

「えっ?いや、サッカーうまいとこ?アツいとこ?いっぱいあるよ、翠は」

「うんうん」

必死になる翠を、やっぱり可愛いと思ってしまう。

「もー、なんなのよ。一紫は?他に私のどこが好き?」

「そうだな、よく笑うとこ。いつも一生懸命なとこ」

「うんうん」

少し納得がいった様子の翠。

傾いてきた太陽を見て目を細める。オレンジ色に染まっている空を、俺は今漂っているのだろうか。

夕焼けを抜けてしまったらそこには闇が待っているのだろうか。

「でも、何か違うと思わねー?」

「エッ?」

驚いたような、図星を突かれたような翠の表情。

「上手く言えないかもしれないけど……」

「……うん」

大丈夫だ。

夕焼けを抜けたその先にはきっと。

キラキラと輝く星空が、俺と翠の周りには広がっているはず。

「俺がアツくなること、翠が一生懸命なこと、同じような意味合いがあると思うんだけど」

「うん、そだね」

「でもさ、その夢中になる内容が違うと思うんだ、俺たち」

何に、重きを置くか。何を大事にするか、大事にしたいのか。

まさに価値観。
翠に分かってもらえるだろうか。