「……大丈夫か?なんか飲み物買って来るよ」

「うん」

翠のカバンから覗いている上着を取り出して翠の肩にかけてから、自動販売機へと走る。自分の気持ちも、翠の気持ちも落ち着かせるために。

自販機の前で深く深呼吸。

大丈夫。

翠ならきっと分かってくれるはずだ。
俺の今の気持ちを素直に話す、ただそれだけでいい。

できるだけ、翠を傷つけないように。

下を向いたままベンチに座っている翠は小さくて。

俺がずっと守ってやりたい、そんな気持ちもまだあって。でもやっぱり、今のままではダメになってしまう。

自分の気持ちを奮い立たせるように、小走りで翠のもとへ。

「ほら、飲んでちょっと落ち着けよ」

「ありがと」

俺の言葉にやっと顔を上げ、ハンカチで顔を抑えてメイクを気にしている。

「虹のこと、その中塚ってやつのこと。
考えてみたらお互い様だよな」

お互いが、相手のことを考えずに傷つけあった。

「そうだね」

いつものミルクティーを一口飲んだ翠が深呼吸をするのが伝わってくる。

「翠は、俺のどこが好きなんだ?」

気持ちを伝えるだけじゃ一方的になってしまう。

「えっ?……優しいとこ」

「それだけ?」

「そりゃ、イケメンなとこも」

「はは、うん」

「え、笑うとこ?しかも否定しないし」

これじゃ俺と一緒じゃないか。付き合ってる相手に優しいなんて当たり前だと思う。そりゃ、最初は顔から入るんだろうけど。