「それは分かってる。でも虹は今あんな状況で、あいつは友だちも少ないから少しでも力になりたいって思ってるだけだよ」

自分の気持ちに、正直に。今できる精一杯のことを。

「随分頼られてるんだね。あの子、私には目すら合わせてくれなかったのに」

翠はずっと眺めていたブランコで遊んでいる小学生からスッと目をそらした。

ちょっと待て、目すら合わせてくれなかったって?

「もしかして、虹と話したのか?」

「あ、いや……うん、ちょっとだけ、ホントのことなのか確認しただけだよ」

一瞬、頭の中に冷たい風が吹くのを感じた。

悪い予感が当たってしまった。いったい翠は虹にどんな話しをしたのだろうか。

「マジか……何言ったんだよ。ていうか、まず俺に聞けよ」

「……ごめん。一紫に聞いたらまたこじれるかなと思って」

「虹は何も悪くない、虹を誘ったのは俺なんだぞ!」

「だから、ごめんって……」

俺の責める口調にとうとう翠の目から涙が溢れ出てきてしまった。

「いや、ごめん……」

初めて見る翠の涙に、俺はこれ以上翠に問い詰めることができなくなってしまった。

しやくり上げる翠の肩を優しく抱いて落ち着くのを待つ。

「……っ飯倉さんには、申し訳ないと思って、る」

消えそうな声で翠が言う。

「……分かってる、もういいよ」

そう言って頭を撫でるしかなかった。

このままじゃ、ケンカ別れになってしまう。それは翠のためにも避けてやりたい。