「夕方になったら涼しいね」

「だな、寒くないのか?」

ノースリーブの腕からは、俺とは正反対の白い腕がのぞいている。

「大丈夫、上着持ってる」

ベンチに置かれたピンクのバッグに目をやりながら言う。

さっき、俺が話があるって言った瞬間から翠の笑顔が薄くなった。

いい話じゃないと察しているんだろう、いきなり別れ話しをされるとでも思っているのかもしれない。

「……話しってもしかして、中塚くんのこと?」

思いがけず話を切り出したのは翠の方だった。

「中塚?」

「違うの?ヤキモチ焼いてたじゃん。こないだウチのクラス来てたんでしょ?声かけずに行っちゃったってミドリが言ってた」

「ああ、あいつか」

あの時、見られてたんだな。

「仲いいんだな……」

「だから、そんなんじゃないってば」

「そんなんじゃないって、じゃあどんなんだよ」

思わず大きくなってしまった声、翠の顔がますます沈み、泣かせてしまうんじゃないかと焦る。

「……ごめん、責めてるわけじゃないんだ」

ただ、分からないだけなんだ。

「……誰かと付き合ってたら他の男子と話したらダメなの?ちょっと古臭くない?」

古臭い……?

「まあ、古臭いんだろうな、その中塚って奴より」

違う、こんな事言いたいんじゃないんだ。

「……なんで?自分だって飯倉さんと2人で仲良くしてたって……」

「やっぱり、聞いたんだ。でも、別に仲良くってわけじゃない」

「……それでも私はいい気持ちはしないよ」

辺りがだんだんと薄暗くなり、余計に2人の気持ちを沈める。