ーー

「きゃーマジでイケメン」
「写真よりずっとイケメンじゃん」

「でしょでしょ!」

…………なんだこれ。

翠のバイト先、オシャレなカフェの前。

バイトが終わり着替えた翠は、なぜかバイト仲間であろう女子2人を引き連れて出てきた。

「えっと……小椋、です」

イケメンイケメンて、まず名を名乗れ。

「みんなが一紫のこと見たいって言うから、ごめんね」

見たいって……見せもんか、俺は。

「……勤務中じゃ?」

制服姿のままの2人を指す。

「あ、そうだ、戻らなきゃ」
「じゃ、失礼します、また!」

何が、また!だ。もう絶対来ないっつーの。

「ごめんね、一紫がここ来てくれるの珍しいから」

「……いや、いーけど」

俺がこういうの嫌いだって知ってるくせに。

まあ、俺だって翠のこと褒められるのは気分がいい。

気持ちは分からなくもないけど……翠と付き合っている以上、こういうことも我慢しないといけないんだろうな。

はぁ……何やってんだ俺。

「ね、どこ行く?」

太陽のような明るい笑顔で俺の腕に絡みついてくる翠。

珍しく俺が部活をサボってまで会いに来たことを、素直に喜んでいる翠。

そんな可愛い笑顔は失いたくない。俺のせいで翠を苦しめたくはない。

でも……。


ーー自分の気持ちを、信じるーー


「話しあんだ、そこに公園あっただろ、行こう」