「なあ翠」

「ん?」

「バイト何時までだ?」

「え、5時まで」

寝転んでいた体制から腹に力を入れて起き上がる。

視線は白い天井から開けっぱなしの窓の外へ。


「じゃ、迎え行く」


暗い夜空にキラリと星が光るのが見えた。空は晴れている。

「え、部活は?」

「んーたまには早退くらいしたっていーだろ」

「どうしたの?珍しい」

自分の気持ちを信じて。


「……会いたいんだ」


今、この気持ちのまま。

翠に会いたい。

会って話がしたい。

「……うん、何か分かんないけど、嬉しい」

はにかんだ翠の声。

ほんの少しの気持ちのズレ。価値観の違い。

そんなの誰にだって感じることはある。
でも。

これだけは譲れない、ここだけは曲げられない。

そこがズレてしまっていたら、これ以上一緒にいてもきっとダメになる。

「じゃ、5時に店の前で待ってる」

「うん」

そんな俺の気持ちを聞いたら、翠は何と言うだろうか。