「そうか……」

「何かあったのか?」

今まで無理してでも学校にだけは来ていたのに、あの呟きがあった後から来ていないって。

「……それが分からないから小椋くんに聞いてるんだけど……小岳さんから何か聞いてない?」

「は?翠?あいつは関係ないだろ」

なんで翠が出てくる?虹と翠は知り合いなのか?

「はぁ、やっぱ聞いてないか」

大きくため息を吐く。

「何をだよ」

だんだんイライラしてきた。あの男子とのことがあってから翠とまともに話しをしてないし、俺の知らないところで翠の話が出てくるし。

いったいどうなってんだよ。

「あのね……私が言ったって絶対に言わないでよ」

もう一度周りを確認した彼女が、声のトーンを落とす。

「ああ、分かったよ」

こんな時だからこそ、翠のことは知っておくべきだ。

「ちょっと前の話なんだけど。小椋くんと虹が学食で2人で会ってたのを、小岳さんの友達が見たんだって」

俺と虹が、2人で?

「あ、あれは2人でって言っても……」

「うん、それは虹から聞いてる」

「ああ、うん。それが翠の耳に入ったってことか?」

別にやましいことなんてしてない。

「んー、たぶんね。私が虹のこと気にかけて欲しいなんて言わなきゃよかったんだけど……」

「いや、それは関係ないけど。でも、それが虹が休んでる原因か?」

翠が気にするなら分かるけど、虹が登校できなくなるほど落ち込む原因になるとは思えない。