ーー

『もう、分からない』

ナナがそう呟いてから1週間が経つ。それ以来彼女の投稿はない。

ナナが虹だという確信はないが、その可能性は高いと思った俺は、昼休みに飲み物を買いに行くついでに虹の教室をチラッと覗いてみた。

しかしそこに虹の姿はなかった。

学食にでも行っているのかもしれない、と諦めて自販機のある踊り場へと足を運ぼうとした時。

「ちょっといい?」

急に腕を引っ張られて半ば強引に人気のない渡り廊下へと連れられて行った。

「えっと……」

名前、なんだっけな。

虹の友達の背の高い女子だった。

「急にごめん」

「いや、どうかしたか?」

彼女はようやく掴んでいた俺の腕を離す。これじゃ、翠のしてることと同じじゃねーか。なんなんだよ、もう。

辺りを伺って、誰もいないことを確認した彼女が話しを続ける。

せっかちだけど、用意周到。そんな性格が見て取れる。

「虹、今週ずっと休んでるんだけど、何か知らない?」

「えっ?」

休んでる?今日は金曜だからもう5日もか?

「具合が悪いって言ってるんだけどね。昨日連絡したら今日から登校するって言ってたのに、来てなくて……ほら、あんなこともあったしちょっと心配で」

そりゃ心配するのも無理はない。現に同じような状況の鼓太郎はもう1ヶ月以上も登校できないでいるんだから。

「……そっか……いや、申し訳ないけど俺は何も知らない。そんなに仲いいわけでもないし、ましてや連絡先すら知らないし」

やっぱり、何かあったのか?さすがに彼女にナナの話しをするわけにはいかないけど。