仲がいいのは悪いことじゃない、俺だって他の女子と話すことだってある。

でもあの2人の様子は、ただ話してるってだけじゃない、そんな気がして仕方がない。

俺の器が小さいだけなんだろうか……。

こないだの試合で少し晴れた心に、瞬く間に薄暗い雲がかかる。

授業はいつも以上に上の空。考えたところで明確な答えなんか出ないのは分かっている。でも、何かしなきゃいけない。

俺が、俺自身のために。

こんな気持ちのまま翠と付き合うなんて、彼女にだって失礼なんじゃないのか。


俺たちが裏庭と呼んでいるそこは、ただの校舎裏だったりする。

校舎と体育館との間、ジメッとした日陰にはコケなんかが生えてて、いかにもって感じだ。

コンクリートの段差に腰掛け、持ってきた水筒から冷たいお茶を流し込みながら透を待つ。

見上げた空は、2つの屋根で細く長く切りとられてしまっていて。

少し秋めいてきた日差しもここには届かない、遮られた空間だ。

「お待たせ!本橋、話し長くて!」

息を切らした透が弁当を抱えてやって来る。

「あー、化学な、分かる」

顔を見合わせて苦笑い。

「話の長い本橋!」
「気の短い橋川!」
「「ダブルブリッジ!!」」

ギャハハと笑う2人の声が体育館の壁にこだまする。

「あー腹減った」

早速弁当の蓋を開けて食べ始める。腹が減っては戦はできない。

何があっても、腹だけは減る。体にエネルギーを入れないと体も頭も動かない。

翠は、今頃何ごともなくいつも通り友達と楽しく弁当を食べてるんだろうな……ああ、こんな考えが器が小さいってことなんだよな。

心までジメジメしてきそうだ。