「ぷはー!風呂上がりの一杯はサイコーだな」

「サイダーで何言ってんだか」

そういう姉貴の前には泡の立つ大人の飲み物。

「ふんだ、俺だってもうすぐ飲めるし」

「ふふん」

たかが数年早く産まれただけで何が偉いんだ?

ビールってそんなに美味しいのか?

ふてくされながら部屋に向かう。

『もう、分からない』

しばらく放置していた校内SNS。

数日前に投稿されたナナの呟き。

どうかしたのだろうか……。

今までも悲観的な呟きはあった。でも、短いその文章からも前向きな気持ちは感じられていた。

だけど……。

ぶん、と首を振って頭に浮かぶ虹の顔を消す。

ナナと重なる虹が気にかかり、以前のようにナナに対して応えてやることができない。

ただでさえ自分のことで精一杯な俺。何もできないのがもどかしい。

今日の試合、久々の清々しい気分。そんな呟きをしようとしていだが、浮かれだ気持ちがスッと落ち着いた。

深く、深呼吸。

夜になると冷たくなる空気から季節の移ろいを感じられる。

『自分を信じる』

自分を信じて今までやってきたからこそ今日のような出来事がある。

だから、きっと大丈夫。

自分に言い聞かせる、そしてそれがナナにも届いたらいい、そう願う。