「うーん。何とも言えないけど。手ごたえがないわけでは、ない」

「お?いいねー青葉学園サッカー部守護神!」

「あはは、やめろよ」

校舎の上には今日は青空が広がっている。いつも、こんな澄んだ空のように清々しい気分でいられたらいい。

「一紫がレギュラーになったら試合見に行くね」

「え?」

「だから、絶対レギュラー取ってね!」

これ以上ない笑顔の翠。いつも以上に目ヂカラが強い。

「ああ、うん……でも俺が出てなくても見にこいよ」

「えー?あたしは一紫が見たいの!サッカーが見たいんじゃないし」

翠の言葉は嬉しいけれど。俺の好きなサッカーを翠にも好きになってもらいたい、そんなのは俺のワガママなのか?

「試合、生で見たら面白いぜ」

だんだんと翠の笑顔が曇っていくのが分かる。

「そんなに見に来てほしいなら、意地でもレギュラー取るしかないね」

意地でも見にこないつもりだな。

俺はレギュラー取るために練習してるんじゃない。チームが勝つならば、俺よりも上手いヤツがいるならば、ベンチだって構わない。ただ、先輩だからって遠慮はしないし、手は抜かない、それだけだ。

でもそんなことを今、翠に言ってみたところで意味はない。これ以上翠の気分を害してしまうのは本意ではないし、スポーツをやったことのない翠に理解してもらうのは難しいのかもしれない。

「そうだな、翠に見に来てもらえるように頑張るよ」

「そうだ!頑張れ!」

翠の笑顔は、やっぱり可愛い。