「ぷはぁ!あー生き返った!」

窓の外からは琥太郎の大きな声。静かな美術室に響く。他の人には少し迷惑だけど、誰も気にする人はいない。そんな部活だから、私も気兼ねなくやっていけるんだろうな。

「だからさ、今日は水分多めに持って来なって言ったじゃん」

クルリと琥太郎の方を向き、いつものお説教。ほら、始まった。

「持って来たさ。でも足りなかったんだよ」

「甘いんだよ。球技大会ナメてんの?」

「いや、ナメてないけど……来年はちゃんと持って来るって」

まるで夫婦だな。いや、親子?

そんなテンポのいい会話を聞いていると、いつのまにか私の手は絵の具を取り、明るいオレンジをパレットに乗せていた。

さっき塗った青い長方形の周りをぐるりと囲むように丸く描くオレンジ。

そう。私の少しくすんだ気持ちを暖かな笑顔で包んでくれた2人。まるで太陽のように。

「お!調子戻ったみたいだな」

「うん、だね」

「じゃ、俺戻るわ、サンキューな!」

そんな2人のやり取りも気にせず私は、いつものように筆を動かす。

その後も薄暗くなり、部活の最終時間になるまで、時々朱里と言葉を交わしながら描き続けた。

私の、大切な時間。

「さ、帰るよ虹」

そう言って笑顔を見せる朱里の髪が、夕日にあたってオレンジ色に見える。