背を向けていた2人が、クルリと私の方へ顔を向ける。

ああ、もうどうにでもなれ。

やけくそのようだけど今の私には、身構えたり上手な言い訳を考えたりする気力さえなかった。ただ、素直に話そう、そう決めた。

「飯倉さん」

「はい……」

彼女たちが私の顔を見ているのは分かる。でも、私は彼女と目を合わせることなんて到底できっこない。

「一紫と、どういう関係?こないだ2人で学食で話してたらしいけど」

口を開いたのはどうやら小岳さんの方らしい。

「私の友達が見たんだって」

今度は友達の方。

「……うん、あの……琥太郎のことをね、嘉山くんと三人で相談してて……」

「は?琥太郎?誰それ?あんたと小椋くんが2人でいたって聞いてるんだけど⁈」

そんな早口言葉みたいにまくし立てられても……。

「えっと……最初は三人で……途中で嘉山くんが帰ったから……」

「ちゃんと分かるように説明してくれない?琥太郎って誰?」

小椋くんから何も聞いてないんだろうか。苛立ちを募らせた小岳さんが腕組みをする。

「琥太郎は、夏休みに亡くなった朱里の幼馴染で学校に来れてなくって……」

「……ああ、そういえば彼氏いたらしいね、あの子」

視線を上げられないでいる私には、もうどちらが返事をしているのかさえ分からない。

正確に言うと彼氏ではないけど、今はもうそんなことはどうでもよかった。

静かな教室に運動部の掛け声だけが響く。その中には、この状況を知らない小椋くんの声も混ざっているのだろうか。