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そんな静かな決心をした数日後。

その間、心配をよそに何事もなく小椋くんと顔を合わせることもなく過ぎていった。


「飯倉さんだよね?ちょっといい?」

放課後、そんな私の決心を頭から砕かれるようなそんな相手から声を掛けられた。

小岳さん、だ。

ビックリするような大きな目は、メイクでさらにキラキラして見え、透き通るようなその白い肌に引き込まれそうだった。

モデルのように小さな顔、長い手足。間違いない、学年一番だ。

私に声を掛けたのは小岳さんではなく、隣にいる彼女の友達だということに気づくのにさえ少しの時間がかかってしまったくらい見とれていた。

「……はい……」

これはきっと、かなりヤバい状況なんだろう。

何かあったら私に相談してと頼もしく言ってくれていた木下さんの姿も見当たらない。

ズンズンと私の前を歩く2人の背中は、何も語らずともそのイライラが手に取るように伝わってくる。

なんで2人?ズルくない?

まあ、小岳さん1人だとしたって敵うわけないんだけど。

恋をすることにすら慣れていない私がこんな状況に対応できるのだろうか……?

心臓は、もはや鼓動をしているのかどうかさえ分からない。変な汗が全身から吹き出す。

2人が入って行ったのは、普段から誰もいない空き教室。使われていない机や椅子が乱雑に置かれ、まるで物置のようになっていた。

人が出入りしないからだろうか、ヒンヤリとした空気を感じる。