「うん、そうだよね……」

少しばかりの不安が表に出てしまっていたのだろうか。

「大丈夫だよ。また何かあったら私に相談して!役に立つか分かんないけど」

頼もしい言葉が私を包む。

「うん、ありがとう」

私にこんな風に言ってくれる人がいる。心配してくれている人がいる。それだけでもう、充分だった。

やっぱり恋に逃げたりなんかしたらいけなかったんだ。ちゃんと自分に向き合って、自分の力で乗り越えていかないと。


そんなことがあった午後も、やっぱり授業には集中できなかった。

めったにあることじゃないのに、廊下でバッタリ小椋くんに会わないだろうかと少しビクビクしながら歩いたり。自分でも何をやってるんだか分からなくなってくる。

モヤモヤした気分を抱えながら乗った電車は空いていて、それが逆に落ち着かなかった。

そういえば小岳さんに彼氏がいるっていうのは聞いたことがある気がする。

それが、小椋くんだったなんて。

手持ち無沙汰になり、タブレットやわ開くと、英語の宿題の締め切りが迫っているとのお知らせメールが先生から入っていて、余計にモヤモヤする。

はいはい、やりますよ……。

心の中でそんな悪態をつきながらSNSのアプリを開く。

『モヤモヤした気分は、ただ空間を漂うだけ』

混雑した電車の中。吐き出した気分は人の間を抜け迷子になりどこかへ行ってしまう。

空いている車内では迷子になることもなくただ、私の周りを漂うだけだ。混み合った車内は好きではないけれど、色んな人の色んな気持ちが交錯して次第に薄れていく、そんな気がする。

イチから個人的にメッセージが届くことはなくなった。これもまた、自分の力で乗り越えていけということなのかもしれない。

吐き出したモヤモヤを払拭するようにゆっくりと息を吐く。