「小椋くんってさ、あの小岳 翠と付き合ってるんだよ」

「えっ……?」

そっか……彼女がいたんだ。

「知らない?学年イチ可愛いって言われてる子だよ」

そりゃそうだよね。あれだけイケメンで性格もよくて。彼女がいないわけないよね。なんで今まで考えなかったんだろう……。

バカだな、私。

「そうなんだ」

小岳さん……どこかで聞いたことはある気がする。

「それがさ、小岳さんって可愛いだけあって、なかなかの性格らしくてさ」

「あ……あの子か」

「知ってる?」

「うん、前にすれ違った時朱里から教えてもらった」

あっちからぶつかってきたのに私が睨まれた時。
確かに可愛かった。でも、いい印象は持たなかった。

はあ、とため息を吐いて木下さんはお弁当の卵焼きに箸を伸ばす。

それを一口で頬張りながら周りを気にするように少し声のトーンを落として話し始める。

「もし虹が小椋くんと2人で会ってたなんて知ったら、何言われるか分かんないよ。まあ、私は虹の性格だから何もないはずだよってその子に言って、小岳さんには黙っててってお願いしたけど」

「……うん……なんか、ごめん。ほんと、そんなんじゃないから」

自分の彼氏が違う女子と2人でいるなんていい気がするはずはない。何もないとかあるとか、相手が誰とか、どっちが誘ったとか、そんなの関係ないだろう。

悪いことしちゃったな……。

「いやいや、悪いのは私だから」

今度はふりかけのかかったご飯を口に運びながら。相変わらず美味しそうに食べるな。