「どこに行くの?」

「ピロティの日影。早く行かないとテーブル取られちゃう」

「ああ、うん」

早足に階段を駆け下りて、ピロティへの出口へ来た時には私の息は少し上がっていた。運動不足が否めない。

でもそのおかげで、日影のテーブル席はまだ空いていた。まだ暑いこの時期、日向でお弁当をたべるのはちょっと厳しい。

「さ、ごめんね。急がせちゃって」

「ううん、空いててよかった」

2人で持って来た冷たいお茶で喉を潤す。目が合うとクスリと笑う木下さん。よかった、木下さんを怒らせたり困らせたりしたわけではないようだ。それだけでも少し安心する。

ふう、と息をつきながら私のより一回り大きいお弁当箱を開ける木下さんの口から出た言葉は、意外なものだった。

「虹、小椋くんと仲良いの?」

「へっ?」

小椋くん?まさかの小椋くん?

仲良いって言われても、どうなんだろ。知り合い?友達?

「いや実はさ、昨日その小椋くんと虹が2人で食堂にいるの見た子がいてさ」

「ああ、うん……いや、2人っていうか……」

嘉山くん帰った後に見られたのかもしれない。そしたら2人だよね。でもなんで?

「そっか……」

「それがどうかしたの?」

私が男子といるのがそんなに珍しい?珍しいのかもしれないけど、私なんかのうわさ話をわざわざするなんて……。相手が小椋くんだから?

木下さんの次に出てくる言葉に不安を感じる。