「ありがとう」

「一緒に体動かすか?」

いたずらっぽく笑う。

「いや、それはちょっと遠慮しとく」

「あはは!だよな。さ、帰ろうか。遅くなって悪かったな」

「うん」

誰もが腫れ物に触るように私の心のトゲには触れてこない。それはそれで私は楽なんだけど。

小椋くんは違う。

トゲには触れないように私の心の中に入ってこようとする。

それはズカズカと土足で踏み入るような雑さではなくそっと優しく、私のことを考えてくれているのが伝わってくる。

やっぱり……好きだな。

こんな人とだったら、どんな困難もきっと乗り越えていけるだろう。そんな逞しさを感じるのはやはり私が今弱っているからだろうか。

2人並んで校門を出る。まさか小椋くんと一緒に帰る日が来るなんて、朱里もきっとびっくりしてるだろうな。

「よく降るな」

「ほんと」

2人で見上げたグレーの空。その分厚い雲の上には透き通るような青い空が広がっている。今は見えないけど、優しい風や流れる時がいつかきっと、それを輝かせてくれるだろう。

「なあ。そういや透たち、この雨ん中運動してんのかな」

「……そうだ……忘れてた」

きっと今の彼らには雨なんて関係ないんだろうな。

「あはは、バカだなあいつ」

「あはは、だね」

ほら、あなたの隣なら自然に笑うことだってできる。


見ててね、朱里。


私も、きっと大丈夫だから。