「こないだはごめんな、任せちゃって」

「ううん」

そういえば前に琥太郎から聞いたことがあった。嘉山はほんとにいいヤツだ。オレと同じ熱いヤツだ。

「琥太郎に会ったんだろ?どうだった?」

「うん」

琥太郎も野球に関しては妥協はしない。2人が仲良くなるのも分かる。

甘く冷たいカフェオレを一口飲んで、バレないように深呼吸。

「思ったよりも元気そうだったよ」

「そっか」

黙ってカフェオレの缶を見つめる嘉山くん。余計な相づちや質問をせずに私の言葉を待っているのが分かる。

「落ちるところまで落ちたから、あとは這い上がるだけだって。学校に来られるのはもう少し時間がかかりそうだけど……」

周りでは友達とのおしゃべりが止まらない何組かのグループが、楽しそうな声を上げている。

「んー、そうか」

野球部員にしては長めの髪をクシャっと搔き上げる。

小椋くんは、私と嘉山くんの顔を交互に見ながら黙って私たちの話しを聞いている。

「嘉山くんがマンションまで来てたって言ったら、連絡してみるって言ってたけど……?」

「ああ、うん、きたよ。心配かけてごめんってだけ」

「……そう」

こんな風に改まって話すと、私と琥太郎はあの日、たいした話をしていないことが分かる。

これじゃ、嘉山くんの役に立てないかもな……。