「飲み物買ってくるよ、何がいい?」

「俺、カフェオレ」

「私も、同じで」

カバンからサイフを取り出してすぐに自動販売機の方に走って行ってしまう嘉山くん。

私は小椋くんと向かいあって2人きり。

職員会議で部活が休みの今日は、いつもよりも食堂も賑わっているようだ。

「ごめん、急に。アイツが琥太郎のこと聞きたいって言うから。虹と話したことないからオレにも付き合ってくれって」

「ああ、うん」

やっぱりみんな初めて話す相手とは緊張するのかな。私なんかに気使ってくれなくていいのに。

久しぶりにちゃんと見る小椋くんはやっぱりかっこよくて、目線をどこに向けたらいいのか迷う。

視線を落としたテーブルの上に置かれた彼の手は私のよりひと回りもふた回りも大きくて。

この手でゴールを守っている。夏休み前の練習での真剣な表情を思い出す。

「部活、どう?」

なんとなく沈黙に耐えられなくなって口を開く。どうでもいい世間話。

「ん。まあ、ぼちぼちやってるよ」

「そっか」

知ってるよ、ぼちぼちなんてやってない。他の部員はそんな感じかもしれないけど小椋くんは違う。

いつだって真剣に練習と向き合ってる。そんな姿に私は惹かれたんだ。

カフェオレを3本抱えた嘉山くんが戻って来て小椋くんの隣に座る。