私は、無理をしてるのだろうか?

「無理……してるのかな。分かんないよ」

素直に出てくる弱音。

「あはは、なんだよそれ」

だって、もう、分かんないんだよ。自分の気持ちも周りの気持ちも。何も、感じられない。

「俺は、無理してない。て言ったらカッコいいけど。無理するとかしないとかの前にもう、どん底まで落ちてた」

「……」

琥太郎の言葉はリアルで、そのリアルを私は間近で見ていた。

「だからもう、どんなに苦しくても辛くても受け入れるしかなかったんだ。朱里がいないっていう現実を」

「……うん」

現実を、受け入れる。

それがどんなに辛いことなのか、私には分かる。分かるよ。そりゃ学校なんて行けるわけないよ。

「だから、後は這い上がるだけだ。これ以上、落ちることはないからな」

そう言った琥太郎は、まっすぐ前を向いていた。

「虹?」

いつのまにか、今度は私が膝に顔を埋めていた。

「ん……」

埋めたままの顔からは、くぐもった声しか出ない。

「絵が……」

「絵?」

「絵が、描けない」

絞り出した弱い気持ち。初めて声に出したトゲは、自分が思っていた以上に重たくて、震える声を抑えるので精一杯だった。

「…………」

ほら、琥太郎を困らせてしまってる。

私が弱さを見せれば、それを受け入れてくれようとする優しさがそこにあることを知っていたけれど。

その優しさに一度でも甘えてしまったらきっと、私は本当のどん底まで落ちてしまう。それが怖かった。