「ツキメイニチ?」

「そう、月命日。朱里ちゃんが亡くなったのちょうど1ヶ月前でしょ」

目の前のお母さんは小ぶりなヒマワリの花束を持っている。朱里の好きな花だ。

「うん、そうだね」

「亡くなったばかりの頃は、月命日にお参りに行ったりするものよ」

「……そうなんだ」

「四十九日もまだだから、お家に伺ったらいいと思うわ」

「分かった、ありがとう」

お母さんから受け取った花束からは夏の匂いがした。

あれから1ヶ月。

私は前にも後ろにも進んでない。

まるで舵の効がなくなった船が大海原を彷徨っているように。もうこのまま、時が癒してくれるのを待つしかない、そんな覚悟。

こんな私を見て、朱里はきっとがっかりするだろう、いや怒るかな。何やってんの⁈しっかりしなよ‼︎

そんな朱里に、会いに行こう。

そうだ、琥太郎も誘ってみよう。

やっぱり、朱里で繋がっていた私たちが会わないのはおかしいと思う。朱里だってきっと、私たちには繋がっていてほしいと思ってるはずだ。

久しぶりに袖を通す私服にちょっと違和感。私、こんなに長い間外に出てなかったっけ。

何、やってんだろ……。

ドアを開けるとまだ生温い風が髪を揺らす。夏はまだそこにいて、時が過ぎるのが遅いことを肌で感じてしまう。

これから、朱里のいない秋が来て、冬が来る。サンマ食べたいって言ってたのにな……。