木下さん以外に、私に声をかけてくる人はいなかった。まあ、朱里がいる時でもそうだったけど。

誰かが小さな声で話しをしているのを見ると、もしかしたら朱里の話題をしているのかも、なんて思うだけだった。

授業はちゃんと聞いて、休み時間は壁にもたれて考えごとをしたり本を読んでいたりした。

タブレットを開いてみたりもするけれど、自分の気持ちなんて存在しないような感覚で、呟くことなどできず。

イチの投稿や、イチからの個人的なメッセージが届いているのも目に入ってはいたが、そんな気持ちにすらなれなかった。

こんな風に、また1人で過ごしたらいい。煩わしい相づちを打つ必要もないし、作り笑いもしなくていい。

心の暖かい場所にぽっかりと空いてしまった穴は、誰にも触れてほしくない、誰にも埋めることなんてできない。

きっとこの穴は一生埋まることはない。少しずつ、少しずつ。時間が埋めていってくれるだけだ。

そんな風に、新学期から1週間が経った。

相変わらず琥太郎は来ていない。

一度メッセージを送ってみたけれど返信はなかった。私だって、琥太郎に何て言ってあげたらいいのか分からない。

クラスでも、いつもと同じ。基本的には1人。

たまに木下さんが何でもない世間話をしてくる程度。思ったより普通に話せていると思う。

絵が描けないので部活にも顔を出さないでいたら顧問から呼び出しを受けたので、とりあえず絵が描けないことを素直に伝えた。

それを聞いた顧問は困ったような顔をして私から視線を外した。

話ならいつでも聞く、絵が描けなくても部室に来てもいいのよ、なんて言われたので、気が向いたらと適当に作り笑いをしておいた。