駅の改札を抜けると、自然と体が改札の外を振り返る。

同じ電車に乗る朱里と琥太郎をここで待つのが日課だった。

朱里がもうここに来ることはない。それはもちろん頭では分かっている。

朱里と過ごした場所に来ることは想像以上に苦しくて、胸の奥が締め付けられる。ほんの数分が、とても長い時間に感じる。

電車が来る時間になり、改札に背を向け階段を降りる。ローファーが鳴らす靴音は、どんなに耳を澄ましても一つしか聞こえない。

琥太郎は、来なかった。

琥太郎とはお葬式以来顔を合わせていない。連絡すら、取ってない。

もともと私たち二人を繋いでいたのは朱里で。朱里が居なくなった今、二人が連絡を取り合う必要もない。

ただ、あのお葬式での彼の様子を見ると、やはり声だけでも掛けてあげるべきだったのかなと思う。

朱里を失った喪失感は、私以上だろう。学校に来られないのも無理はない。

自分のことでいっぱいなのは、私も同じだけれど。傷を舐め合いたいわけではないけれど。

改めて、私にとって琥太郎は複雑な存在だったんだなと気付かされる。

今度、学校の様子を知らせがてら琥太郎に会いに行ってみようかな。

学校のある駅に着くと、当たり前のように同じ学校の生徒の姿が多く見られる。

またそこに、朱里の姿を見たようで胸が締め付けられる。こんな思いをずっと抱えていかなければならないのだろうか……。