もともと友達なんかいない、居場所なんてない。それでもやっぱり、家以外に私の居場所があるとしたら、それは学校しかなかった。決して行きたいわけではないけれど。

部活以外ではずっと一人だったんだから、朱里がいなくてもそれは変わらない。

慰めてくれるような仲間も、同情の目を向けてくるような単なるクラスメイトさえ、私にはいない。

学校にすら行かなかったら、きっと私は壊れてしまうだろう。

「虹!起きてる?お母さん、もう行くわよ」

「うん、起きてる。行ってらっしゃい」

両親は普段通り過ごしている私が強がっていると思っているのだろう。いつもより、優しい。

違うんだ。

普段通り過ごしてないと、どうにかなってしまいそうで、怖い。

それが、強がりなんだろうか。

優しくなんかして欲しくない、放っておいて欲しい。

テーブルの上に用意されていた、私の大好きな近所のパン屋さんのクロワッサン。

濃くて熱い紅茶と一緒に飲み込む。色んな想いが、体に入れられた熱い紅茶を瞬時に冷ます。

味気ないそのパンを、また美味しく食べられる日は来るのだろうか。

ぶん、と強く頭を振り余計な思考を飛ばす。


何も、考えない。何も、感じない。