朱里が亡くなってからの3週間、自分が何をしていたのか記憶がない。

昨日の夜、宿題は全てやり終えているのは確認したけど。いつやったのかは分からない。

親友が、死んだ。唯一の心の拠り所が、なくなった。その事実はあまりにも非現実的で。

きっと今私は、絶望のどん底にいるんだろう。もちろんそれを感じてはいるんだけど。


ーーあの日


琥太郎の電話で駆けつけた病院で、安らかな朱里の顔が冷たかった時も、お葬式で朱里の家族や琥太郎が泣き崩れている時も。

自分はそこにいない、そんな気がしていた。自分の代わりの誰かの目を通して、その現実とは思えない光景を見ている、そんな感じだった。

涙すら、出てくれなかった。

ただただ、胸がえぐられるように痛かった。

これは嘘だ。みんなが自分を騙しているんだ。いつも悲観的で自分の殻に閉じこもってばかりの私に、タチの悪いイタズラをしているんだ。

嘘であって欲しい、そう願い何度か朱里に送ったメッセージに既読が付くことはなかった。

いつものように、明るい笑顔の朱里がそこにいると、信じていた。

悲しいとか、苦しい、とか。そんな感情があるのかないのかすら分からなくて、ただ淡々と家の中という狭い空間で、毎日が過ぎていった、そんな長い長い夏だった。