「琥太郎になんて言ってやったらいいのか分からなくてさ……学校も来てないみたいなんだ」

「そうか……」

彼が今、いったいどんな気持ちで過ごしているのかと思うと、胸の奥がギュンと痛んだ。

そして虹のことも。

彼女はちゃんと学校に来ているのだろうか。あの綺麗な空の絵を、仕上げられただろうか。

誰か、彼女を支えてくれる人はいるのだろうか……。

まだあまり話したこともない俺がしゃしゃり出ることではないのかもしれない。

でも俺は、どうしても虹のことが気になって放課後彼女の教室へと足を運んでいた。

帰りの学活が終わったばかりの教室にはまだたくさんの生徒たちが帰り支度をしたり友達と話したりしていた。

虹はちゃんと来ていた。

1人カバンを肩から下げ、下を向いたまま出口へと歩いてくる。廊下に立つ俺にはまだ気づいていないようだ。

出口を出て、階段の方向へと曲がる虹。何と声をかけてたらいいのかなんて、分からなかった。まだ、俺は虹のことを何も知らない。

「虹!」

それでも体は勝手に動き、細い虹の肩を掴んでいた。

驚いて振り向いた彼女は、夏休み前に見た時よりも一回り小さくなったようで、やはり次に出てくる言葉は見つからなかった。

「……小椋くん、久しぶり」

そう言って俺を見た彼女は、少し微笑んでいて、ホッとしたような複雑な気持ちになる。

「ああ、久しぶり」

俺は、今どんな表情をしてる?