「うん。さすがにショックなのか、それきり部活に来ないんだよ」

「そうか……」

無理もない。幼馴染で彼氏同然だなんて……俺には彼が今どんな気持ちでいるのか想像もできない。

「うん。何回か見かけたけど、けっこう可愛い子でさ。もちろん仲も良くて。よく美術部の部屋覗いてた」

「美術部?米村さん美術部なのか?」

確か、みんなテニス部だって言ってなかったか?

「ああ、そうだけど……?」

どんだけ情報が錯乱してんだよ。
まあ、俺の情報網がサッカー部とクラスの一部だけっていうのにも問題があるんだけど。

「どうかしたか?」

「いや……米村さんって下の名前なんて言った?」

「え?確か朱里だったかな」

「朱里……」

薄い記憶の中で聞いたことがある名前。

夏休み前、虹に声をかけた美術室。そこで虹と一緒にいた子、確かに朱里って呼んでいた。

「もしかして、虹って子と仲がいい?」

「虹……?黒髪のおかっぱでおとなしそうな子か?」

「ああ、それだ」

「うん、いつも米村さんと琥太郎と、そのおかっぱの子と三人でいたよ。仲良かったんだろうな」

「……」

まさか、あの子が米村さん……。

「その子がどうかしたか?」

「ああ、いや別に」

「同じくショック受けてんだろうな、可哀想に」

「だな……」

大丈夫なんだろうか、虹。