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高校生活初めての夏休みはあっという間に終わろうとしていた。

翠と行った夏祭り。思ったよりも大人びた紺色の浴衣に身を包んだ翠は、本当に可愛くて。色々とモヤモヤしていた気持ちが一気に吹き飛ぶようだった。

翠は父さんのお下がりの俺の浴衣姿も喜んでくれた。

祭りと浴衣。それらの非日常というスパイスが効いて、あの気まずいケンカをしたことなどなかったかのように、楽しい時間を過ごせた。

神社の裏手へ続く細道、人通りから少し離れたその場所で、俺たちはキスを交わし、改めて思いを伝えあった。

それでいいんだ。翠が俺を1番に思ってくれていたら、それでいい。

暑い中の部活は確かに身体にこたえた。つかの間の休日には翠や友達と一緒に出かけてリフレッシュ。学生らしい、ありきたりの夏休み。

そんな仲間の間でも、米村さんが亡くなったことは話題になっていた。確かな情報ではないものを、あれやこれやと盛った内容は耐えられるものではなく。俺は自然とその話題を避けるようになっていた。

ただ気になっているのは、あれからナナの投稿がピタリと止まってしまったことだ。

俺の投稿には必ずイイねをつけてくれていたナナ。それがあの米村さんの事故があった頃から一切、なくなってしまったのだ。

まさか、本当に米村さんがナナ?

ナナが誰だか分からない以上、真実は分からないのがもどかしい。