2枚のたい焼きを食べ終え、お茶を静かに飲み干す。

「ちなみに、どうして未来に行きたいんですか?」


僕がそう尋ねると、由梨さんは口をつけた湯のみの縁を指先で拭いながら、しばらく考え込む。

ぷっくり膨らんだ大きな両手で、大事そうに湯のみを包み込み__。

「そりゃ、あいつと結婚してうまくいってるのか確認するためよ」


そうは言ったものの、どこか戸惑っている風で。



「なんか、それが想像つかないのよね」

「高橋さんのこと、好きなんですよね?」

「嫌いじゃない」


湯のみを両手から解放し「嫌いじゃないって便利よね。曖昧だからホントは使いたくないけど」と力なく笑った。



笑うと、牧子さんによく似ている。

女手一つで、由梨さんをここまで大きくさせた牧子さんは、いつも『大したことないわよ』というが、その苦労は並大抵のものじゃなかっただろう。

お店を切り盛りし、母親の役目をつとめ、時に父親にもならなければいけない。


由梨さんはきっと、そんなお母さんの小さいけれど大きな背中を見て育った。



愛嬌はそのまま受け継がれ、2人でお店を切り盛りしている。

とても素敵な、母娘だった。


「じゃ、そろそろ行こうかな。ごちそうさま」


由梨さんが立ち上がる。



気づけば僕は__。

「少し時間、ありますか?」