耳慣れた音楽が、アーケードに響く。
時刻は7時きっちり。
ホウキを立てかけ、僕は店の前に躍り出た。
「おはよう!」
斜め向かいで整体をしている『揉みじや』の牧子さんが大きな声で手を振った。僕もたまにその手にお世話になっている。
「おはようございます!」
元気よく挨拶をし、腕を思いっきり回す。
最初はなんだろう?と思ったが、もう何十年も前からラジオ体操をするのが、この大丸商店街の習わしだった。
とはいっても、大半は適当に腕を動かしながら喋っている。
この僅かな時間の情報交換がまた、商店街には必要なんだろう。
左右100メートル、それぞれの店主が並んでいる景色はある意味、爽快だ。僕がお店を始めてから、ところどころ虫食いのようにひとが欠けていったが、昨今の『シャッター通り』なんていう風潮からすると、大丸商店街は踏ん張っていた。
なぜか最後は一本締めで終わる。
ぱんっ!と冷たい空気を叩き、僕はお店に戻る。
お店の開店時間は9時だ。
まだ2時間あるが、鉄板に火をつける。
そろそろかな?