「はい、お待たせしました」


たい焼き2枚とお茶を出すと「これこれ」と少女のように微笑んで大口を開けた。

「あっ、一緒に食べる?あなたは多分、頭からかしら?」


なんて含み笑いをする、悪戯っ子な面がある。

「大丈夫です。毎日、味見してるんで」


丁重にお断りすると、パクパクと食べ始めた。

頭からだ。


うん、やっぱり占いは当たっている。



「腰、大丈夫?」

「はい、この間、お世話になったので」

「またいつでもいらっしゃいよ」


黄金の手のひらと呼ばれている牧子さん。その手が触れるだけで、体の悪いところを言い当てるから驚きだ。



そして施術が終わると『すぐに小豆(あずき)を食べると筋力が回復する』と、うそかまことか分からないことをお客さんに吹き込み、ありきに送り込んでくれる。

有り難いご近所さんだ。


「由梨(ゆり)さんは出張ですか?」

「あら、由梨のことが気になるの?」


牧子さんがまた悪戯っ子の目をする。


こういう展開になるのは分かっていたが、つい聞いてしまったんだ。

牧子さんの1人娘の、由梨さんのことを。


由梨さんは母親と同じ整体師で、主に病院などに出張に出ている。あんこが大好きで、たい焼きでは心もとないと、あんこそのものを買っていく時もあった。