「こう!っていうのは無いんですけど、だいたい『1枚』が多いですね」
僕がそう言うと、源さんが大袈裟に顔をしかめる。
「なんだよ、ちゃんとしたやつねーのかよ?」
「俺は1枚だな」
亀さんが、残った目玉の辺りを口に放り込む。
「1枚じゃ、煎餅と同じだな」
ようやくあんこだけ吸い取った吾郎さんが、皮だけをむしゃむしゃと食べ始める。
「あっ」
思い出したというように、僕は声を上げた。
「1尾(び)っていうのもあります」
そう言った瞬間、3人が顔を見合わせる。
なんだか変な間ができてしまった。
「あいつ、なにしてんだ?」
とっくに食べ終わっている源さんが、さらに顔をしかめる。
「俺が出てくる時は、魚のケース洗ってたな」
亀さんが眉を寄せると、ずずずっとお茶を飲み干した吾郎さんが「どうしようもないな」と、ため息まじりに吐き捨てた。
そうなんだ。
3人じゃなくて、4人だ。
いつも4人で連れ立ってやってくる。
それは『ブルボン』のモーニングだったり、おにぎり専門店『千作』の天むすだったり。そのローテンションに『ありき』も組み込まれていていて、朝からぞろぞろと4人はどこかの店に顔を出す。