私と葉月は今、吹奏楽部の練習教室にいる。まだ、部員は全員揃っていないが、来た人から練習する様に言われていた。
「葉月……」
「沙月、いい?たとえ、性格が変わっても晴斗は晴斗」
「でも」
「だから、そんな思いつめたような顔をしないでよ」
あの後、翔と葉月は晴斗に近づかなかった。私は根気強く話しかけたが、避
けられるばかりだった。
「葉月、人って見ない間に変わってしまうものなのかな」
「そうね……。私にもわからない」
すると、ガラガラと戸が開き部員が入ってきた。今日は本番予行練習。リハ
ーサルなんだけど、結構ドキドキする。
「さ、始めるぞ!」
翔が高らかに声をあげ、曲が始まった。二曲、続けての演奏。私は息継ぎが
苦手。楽譜を見ながら、音に気持ちを込める。
ふと、視線をあげた。
「……!」
私の視線の先に晴斗がいた。窓の向こうから、こちらの様子を伺っている。
「クラリネット、遅れた。もう一度」
指示が飛んできた。私がよそ見をしていたからだ。
「すいません」
そして、窓の向こうを見たときには、もう晴斗はいなかった。