――このことは、沙月には言っていない。
心苦しいが、沙月は翔のことが好きだ。
以前、沙月は赤くなりながら、私にそう告げた。
私は随分と酷い奴だと思う。親友の気持ちを知っておきながら、こういうことをするのは。
私は、活動場所を後にした。何となく、居づらくなったのだ。
――両思いってなんだ?今まで、私と翔は両思いだったはずだ。
こんな思いになるくらいだったら、あの時、最初っからごめんと言えばよかった。
少なからず傷ついている自分に、拍子抜けだ。
――結構、翔のことが好きだったのか。
沙月にではなく、自分自身にイラついた。