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 よく晴れているある朝、私はいつものように二人、いや三人の親友を待っていた。

 「おはよー、沙月」

 一番乗りは、いつもの翔。翔に、あともう一人待つ、ってこと言わないと。もちろん葉月にも。

 「おはよう、あのね、翔。今日、晴斗も一緒に行くんだって」

 「晴斗?あの、晴斗?」

 「そーだよ。晴斗は晴斗だけしかいない」

 「ふーん。昨日、なんかあった?」

 翔は心配そうな目をしている。私は、翔の不安を取り除くように笑った。

 「おはざーっす!」

 大きな声が聞こえてきた。声のする方を二人で見ると、晴斗が駆けてきていた。

 「翔!沙月!おはよ!……あれ、葉月は?」

 翔は昨日と違う晴斗を、訝しげな様子で見ていた。

 「ひぃー、ごめんごめん、遅れたぁ。おはよ……ん!?」

 「おぉ、葉月!おはよう!」

 「は、晴斗?なんでいるの?」

 葉月が即、質問をする。

 「んー?皆と一緒にいたいから?」

 「ふーん。じゃ、いこっかぁ」
 
 晴斗は昨日とは違い、明るく過ごしていた。教室に入れば、いろんな人に声をかけてどんどん仲良くなっていき、先生にも好かれ始めた。

――なんでだろう?昨日の暗い雰囲気は、嘘だったの?

 そう思っている自分がいた。そしてそれは、私だけではない。葉月も翔もだ。

 「沙月……。あれ、何があったの」

 葉月が化け物を見たときのような声音で、私に質問をする。

 「うーん。よくわかんない。なんで、急に明るくなったんだろうね」

 昨日のことは、言わない方がいいのだろうか。でも、二人を裏切りたくない。だけど……。

 「俺も葉月と一緒だ。なぜ、あんなに昨日と違うんだ?」

 「ま、そこは置いておいて。期末テストがあるよね」

 私は、頭の中でぐるぐる回る黒いもやを、吹き消すように一気に話題を変えた。

 「そういえば、そうね」

 葉月が、あぁ、と頷く。

 「一緒に勉強しようよ。翔も葉月も頭いいし。教えてくれる?」

 「いいけどよ……。それってさ、沙月だけ得してね?」

 「え?」

 「だから、沙月に勉強を教えるためにいくんだろ?」

 「ちーがーうー」

 「はい、はい。翔もそんなにいじめないの。ね、沙月?」

 葉月が私にギュッと抱きついてきた。私も、葉月をギュッと抱きしめた。

 「あー!」

 三人で話をしていると、晴斗が急にやって来た。

 「俺も混ぜて!勉強、一緒にするの?俺も行くー!」

 晴斗は満面の笑みを浮かべながら、翔の肩に手をかけた。翔は驚いたような
表情は見せず、ただ笑っていた。

 すると、葉月が一つの提案をした。

 「じゃ、四人で勉強しに行こうか。来週の日曜にでも」

 「そうだね!そうしよう!」

 晴斗がにこっと笑って、私にピースサインを出した。