「はーい。今日の練習は終了でーす。お疲れさまー」

 互いに声を掛け合う。これが日課となっていた。

 「沙月、葉月、一緒に帰ろーぜ」

 荷物をまとめ終わった翔は、戸の前で待ってくれていた。

 「んー。沙月、行こ」

 「……」

 「沙月?」

 「あ、そういえば、今日、先生に進路のことで呼ばれてた!」

 「そうなの?」

 「うん。だから、先に帰ってていいよ」

 私は、鞄にクラリネットをしまいながら二人に言う。

 「そうか、一緒に帰れねーのか……」
 
 なぜか翔が悲しそうにそう言った。

 「ご、ごめんね」

 私は顔の前で手を合わせて、二人に謝った。

 「大丈夫。ほら、沙月。送れないで行きな」

 葉月が、私が落としたファイルを拾ってそう言ってくれた。

 「うん。ありがとう。また明日ね!」

 私は二人と廊下の前で別れた。二人を見送った後、急いで、ある場所に向かった。

 
 そこは、職員室ではなく、二の三の教室だった。