今は夏だというのに、口からは真冬のように白い息がこぼれている。
感情が不安定になると体温はさらに低くなるようだ。
震え出す体にゾクゾクと悪寒が走っていた。

「死んでいる私のことが、どうして見えるの?」

「理由は僕にもわからないんだ。昔から霊感ってやつがあってね、強い霊気だけは感じることができた。って言っても、ぼんやりと見えるくらいのレベルだけどね」

昔、私にも霊感の強い友達がいたことがある。
顔も思い出せないけれど、周りから理解されなくてつらそうだった記憶がある。

「私のこともぼんやりと?」

「いや、先輩のはそうとう強い。しっかり顔も見えているよ」

ニッコリと笑う輪から思わず目を逸らしてしまう。
その無邪気な瞳に対して妬みの感情がモワッとお腹に広がるのを必死で抑えた。

「これほどまでに強い霊気を感じたのは初めてだったから思わず見に来ちゃったんだよ。おかげで迷子になってしまって、ずいぶん山道を歩かされたけどね」

あはは、と笑い声まで上げた輪に、私はムッとした表情で答えた。