白い煙が風に流されると、目の前には全身黒ずくめの案内人が立っていた。
今日も頭から足先まで黒一色。
前髪をかきあげると、切れ長の目を細めて彼は私を見た。
「まだ地縛霊にはなってないようだな」
低音の声が嫌味っぽく耳に届く。
身長が高いせいで威圧感がすごい。
案内人は隣にいる輪を見て眉をひそめた。
「なんだこいつ。知り合いか?」
あごで輪を差す案内人に私は首を横に振った。
彼は人を嫌な気持ちにさせる名人だから、話をしたくない。
それに、輪を巻き添えにするわけにはいかない。
「お前、まさか人間を襲おうとでもしてたのか?」
してません、とにらみ返してすぐに目を伏せた。
「ふん。たまたまか」
輪から見えていないと結論づけたのだろう、私に近づいてくる案内人。
うつむく私の狭い視界に、その大きな靴先が映った。
ぽん、と頭にその大きな手が置かれた感触。
毎回、私の前に現れた案内人はこの作業をする。