ふいに周りの音が遠ざかったように聞こえなくなったかと思うと、女性の声がした。

――『いつまでも友達でいようね』

声はすぐに消えた。

「今の声は……」

「声?」

聞こえていないらしく輪は首をかしげている。

「女の子の声が聞こえた気がしたんだけど……ううん、なんでもない」

ギュッと目を閉じた。
間もなく地縛霊になる私だから、ついに幻聴まで聞こえ出したのかもしれない。
再び目を開けると、あたりに白い煙が漂うのがわかった。
どんどん濃さを増し、霧のように景色をかすめていく。

「わ、なにこれ?」

さすがに霊感の強い輪には見えるらしい。
ああ、この展開はヤバい。
この白い煙は、案内人が私の前に現れる合図。
たまに私の前に現れたかと思うと、未練解消をしなかったことを未だに責めてくる。
言い訳を繰りかえしていた私も、最近では彼と話をすることをやめてしまっていた。