さっきまで明るかった表情が少し曇ったように見えた。

「どういうこと?」

聞かなくてもいいのについ尋ねてしまった。
昔から、悲しんでいたり悩んでいたりする人を放っておけない性格だったことを思い出していた。

「霊感が強いせいでどうしても気味悪がられるんだ。そりゃそうだよね。突然、誰もいない空間に向かって話し出したりするからさ。親や兄ちゃんですらもすっかり手を焼いちゃって、結局僕から言い出した形でひとり暮らしをすることになったんだ」

ため息を飲みこむように輪は口をへの字に曲げた。

「それでこの町に来たの? ……ひとりぼっちで?」

すると輪は「うん」と笑みを浮かべてから、視線を遠くへやった。

「昔から海が見える高台のある町に住みたかったんだ。この町ならピッタリだって一目で気に入ったよ。とは言っても、住むのは狭いアパートだけどね。でも、厄介払いができて親もホッとしてると思う。兄ちゃんだけは心配してくれてるけどね」

輪はコロコロと笑った。
昔からある霊感のせいで周りから気味悪がられて、いわば追い出されたようなものだろう。
それなのに、悲惨な現状を他人事のように楽しそうに語る彼が不思議だった。

「光莉はどうして死んじゃったの?」