この人も私の噂を聞いて、バカにしに来たのだろうか。

たまに名前も学年も知らない人たちが廊下の窓から覗きに来ては、面白そうに顔を見合わせて帰っていく。


『垣谷みあは笑わない』


ただそれだけのことがなぜか有名になってしまい、一人の時は教室にさえ居づらい。

だからこうして一人になれる場所を見つけたのに。

そんなのはただの噂だろうと確かめにきたの?

それともただの冷やかし?

頭の中で浮かび上がってくるいくつもの疑問に眉根を寄せる。

答えはどうであれ、問いつめる気もないけれど。

男の子から視線を外したまま、地面に向かってぽつりと答えた。

足を動かせば、じゃり、と靴が擦れる音がやけに鮮明に聞こえる。

「笑わないんじゃなくて、笑えないんです」

「ふーん」

そ、そっちから聞いて来たのに……!

まさかの、ふーんって……。

興味なさげな適当な相槌が返ってきて、またカメラに没頭する男の子。

そして、沈黙。

この人、いつまでここにいるつもりなんだろう……?

隣からはまたカメラのボタンを弄る機械音が聞こえて、だんだんとそれが耳に障るようになってきた。

仕方なく自分がこの場を離れようとしたその時、はっとしたように顔を上げた男の子は私を見て。

「笑えないのなら、撮る側になればいいんじゃない?」

そう言った顔は、良いことを思い付いた。とそんな表情をしている。

「は……?」