ただ、ここに旦那がいないというだけで、明美の心は張り裂けてしまいそうなほど痛かった。

海の中には数人のサーファーと、砂浜では砂のお城を作っている小学生がいる。

その光景を眺めながら1人で砂浜を歩いていると、強い風が吹いて来た。

咄嗟に頭を押さえ、今日は帽子をかぶっていない事を思い出した。

代わりに、砂のお城を作っていた少女が被っていたピンクの帽子が飛ばされた。

男の子がすぐに立ち上がり、帽子を追いかける

ピンクの帽子は明美の前までやってきて、途端に風がやんだ。

落下する帽子に咄嗟に手を伸ばす明美。