和斗は慌てるでもなく、ゆっくりになるでもなく、自分のペースで階段を上っていた。

そうしていると、不意に視界に愛花ちゃんの姿が映った。

思ってもいなかった出来事に和斗の心臓はドクンッと大きく跳ねた。

目的地が同じなのだから、階段でバッタリ会う事もよくあることだ。

だけど、愛花ちゃんに会うという覚悟がないままその姿を見つけてしまうと、ひどく緊張してしまう。

愛花ちゃんと目があった。

愛花ちゃんは軽く会釈をしてきた。

和斗も同じように会釈する。

言葉はないけれど、無視されているワケでもない。

嬉しいけれどもう少し距離を縮めたいという、複雑な気分のまま和斗は学校へ向かったのだった。